「問い合わせメールの内容を読んで、種類ごとに振り分け、返信案まで作ってほしい」。こうした「判断を含む作業」を自然言語の指示で任せられるのが、ZapierのAIエージェント機能です。この記事では、Zapier Agents 使い方の基本から料金、通常のZapとの違い、ガードレール・承認設計までを、中小企業の担当者向けに整理します。なお、Zapierは現在このAgentsを「AI by Zapier」としてZapエディタへ統合する移行を進めており、その状況も踏まえて解説します(情報は2026年10月時点で公式ページ・ヘルプを確認したものです)。
基礎は当協会のDX・AI情報サイトの関連記事もご覧ください。
Zapier Agentsとは?現行の名称と位置づけ
自然言語で指示するAIのチームメイト
Zapier Agentsは、Zapierが提供するAIエージェント機能です。公式サイトでは「superhuman teammates」と紹介され、9,000以上のアプリと連携して動くと案内されています。作り方の中心は、やりたいことを文章(自然言語)で書くことです。Zapier Copilotが指示文の整理を手伝い、アプリ連携やWeb閲覧などの「ツール」を足していきます。
起動のきっかけ(トリガー)は、手動、スケジュール、連携アプリのイベント、Zapからの呼び出しなどから選べます。
重要:「AI by Zapier」への移行が進んでいる
最初に押さえておきたいのが名称と提供形態の変化です。Zapierのヘルプでは、スタンドアロン製品であるAgents(agents.zapier.com)を、Zapエディタに組み込まれた「AI by Zapier」へ移行すると案内されています。移行後は、既存のエージェントが「通常のトリガー+AI by Zapierのステップを持つZap」になります。
ヘルプには、Agentsの停止日はまだ決まっておらず、停止前に案内するとの趣旨の記載があります。方針は変わり得るため最新情報をご確認ください。
通常のZapとの違い
通常のZapは、「Aが起きたらBをする」という手順を人間が事前に決める仕組みで、同じ入力なら同じ結果になります。一方エージェントは、目的と使えるツールを渡し、どの順で何をするかはAIが判断します。Zapier公式ブログも、80%程度の精度で十分な場面はエージェント、正確さが必要な場面はZapという考え方を示しています。
当協会の支援現場では「全部AIに任せたい」というご相談があるものの、実際には請求・在庫・顧客データの更新などは通常のZap、文章の要約や分類・下書きなど曖昧さを許容できる部分だけAIに任せる、という切り分けに落ち着くケースが多い傾向です。
Zapier Agentsの料金プラン
Agentsの料金体系(アクティビティ課金)
Zapier公式の料金ページ(確認時点)では、Agentsは通常のZapのタスクとは別に、「アクティビティ」という単位で使用量が数えられます。公式ヘルプによると、次のような行動がそれぞれ1アクティビティです。
- エージェントがトリガーを使う
- ナレッジソースを使って質問に答える
- アクション(アプリ操作)を実行する
- Web閲覧・スクレイピング、Web検索を行う
- Chrome拡張機能からエージェントにメッセージを送る
| プラン | 月額 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| Agents Free | 無料 | 月400アクティビティ。テスト実行も消費する。1回の実行上限は10アクティビティ |
| Agents Pro | $33.33相当(年払い$400) | 月1,500アクティビティ。テストは消費しない。1回の実行上限は40 |
| Agents Enterprise | 要問い合わせ | アクティビティ数をカスタム。エージェント共有、監査ログなど |
上限に達するとエージェントは動かなくなり、トリガー受信もできなくなります。80%到達時と100%到達時に通知が届き、上限は毎月リセットされます。
AI by Zapierへ移行した場合の課金(タスク×モデル倍率)
移行先のAI by Zapierは、通常のZapと同じタスク課金です。公式ヘルプ(2026年6月15日開始の新料金)では、選ぶモデルの区分によってステップあたりの消費タスク数が変わります。
| モデル区分 | 消費タスク | 特徴 |
|---|---|---|
| Standard | 1倍 | ツール呼び出しは使えない |
| Advanced | 3倍 | 既定の区分。ツール利用可 |
| Premium | 5倍 | ツール+高度な推論 |
| Custom | 1倍 | 自社のAIアカウントを接続 |
なお、1ステップが1回の実行で75タスクに達するとZapが一時停止し、承認を求める安全装置があります(500まで調整可と案内)。AI by ZapierはProfessional以上のプランで利用でき、Freeでは使えません。
通常のZapプランの目安と注意点
Zap本体の料金は、Freeが月100タスク、Professionalが月額$19.99から、Teamが$69から、Enterpriseは要問い合わせと表示されています(年払いで割引表記あり。タスク数で金額は変わります)。料金・無料枠・倍率は改定されやすい項目です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
他ツールとの比較(Zap・Make・n8n)
機能・価格・想定ユーザーの比較表
| ツール | 機能の特徴 | 価格の目安(公式表記) | 想定ユーザー |
|---|---|---|---|
| Zapier Agents/AI by Zapier | 自然言語で指示、9,000以上のアプリ連携、承認・ガードレール機能 | Agents Free月400アクティビティ、Pro年払い$400。移行後はタスク課金(モデル倍率あり) | ノーコードで素早く始めたい非エンジニアの担当者 |
| Zapier通常のZap | 手順固定で再現性が高い。AIステップを一部に組み込める | Free月100タスク、Professional月$19.99から | 正確さが必要な定型業務 |
| Make | 視覚的なシナリオ設計。AIエージェント機能も提供 | Free月1,000クレジット、Core月$12(10kクレジット)から | 複雑な分岐を設計でき、コストも抑えたい担当者 |
| n8n | 実行回数ベース課金。セルフホストの無料Community Editionあり | Cloud Starter月€20(年払い、2,500実行)から | 技術者がいて、運用の自由度やデータ管理を重視する企業 |
選び方の考え方
非エンジニアが少人数で始めるならZapier、コストと分岐設計の自由度ならMake、技術者がいてデータ管理を重視するならn8nが候補です。表の価格は前提(年払い・通貨・単位)が異なるため、自社の処理量で試算してください。
Zapier Agentsの使い方(ステップ形式)
基本の作成手順
公式ブログに沿った作成の流れです。移行後はZapエディタのAIステップで行う形になるため、画面名称は公式ヘルプで確認してください。
- Step 1:目的を決める。「問い合わせの分類と返信案作成」など、1業務に絞ります。
- Step 2:新規作成して指示を書く。「+ New agent」から、目的を自然言語で書くかテンプレートを選びます。Copilotに指示文を整えてもらうこともできます。
- Step 3:アプリを接続する。必要なアプリだけを接続します。
- Step 4:トリガーを選ぶ。手動、スケジュール、アプリのイベント、Zapからの呼び出しなどから選びます。
- Step 5:ツールを追加する。データソースやアクションを追加します。
- Step 6:テストする。右側のテスト画面で動作を確認します。Free枠ではテストもアクティビティを消費する点に注意してください。
- Step 7:小さく運用する。最初は下書き作成までに留めます。
ガードレール・承認設計:人の確認を挟む
自律的に動くぶん、確認の仕組みが欠かせません。Zapierには次の手段があります。
- 指示文に承認を書く:「次に進む前にSlackで私に確認すること」と書くと、エージェントが一時停止し、承認か中止を選べます。
- Human in the Loop:Zapの途中で承認・却下・データ修正を依頼できる機能です。通知はメール、Slack、別Zapの起動から選べ、タイムアウトやリマインドも設定できます。Professional以上で利用でき、成功したアクションがタスクとして数えられます。
- AI Guardrails by Zapier:AIの出力に対し、個人情報(PII)検出、プロンプトインジェクション検出、感情分析、有害表現の検知を行います。公式も「100%正確な検出はない」と注意しており、あくまで安全策の一層として使います。
設計の原則は、「読む・調べる・下書きする」は自動、「送る・更新する・削除する」は人の承認、と分けることです。
活用事例(当協会の支援現場の傾向を匿名化した例)
以下は、当協会の支援現場で見られる傾向を匿名化・抽象化した例で、特定の企業の実績や効果の保証ではありません。
事例1:士業事務所(従業員10名規模)の問い合わせ一次対応
相談内容を読んで緊急度と種別を分類し、担当者へ通知して返信下書きを作る運用です。送信は担当者が確認し、仕分け時間が減る傾向があります。
事例2:製造業(従業員30名規模)の見積依頼メールの整理
見積依頼メールから品名・数量・納期を抽出してスプレッドシートに一覧化します。金額に関わる項目は人が最終確認し、入力負担の軽減に向く例です。
事例3:小売・EC(従業員15名規模)の口コミ・レビュー要約
週次で口コミの傾向を要約しチャットに投稿する運用です。返信や値引き対応は人が判断し、曖昧さを許容できる分析業務は相性のよい領域です。
Zapier Agentsのデメリット・注意点
出力が毎回同じとは限らない
AIが判断するため結果が揺れることがあります。請求書作成など再現性が必要な処理は通常のZapで固定し、AIは下書きや分類に限定します。
使用量が読みにくくコストが膨らみやすい
ツールを呼ぶたびにアクティビティが消費され、AI by Zapierでもモデル区分でタスクが3倍・5倍になります。想定より早く上限に達することもあるため、最初は件数の少ない業務で消費量を測ってください。
提供形態の変更リスク
前述のとおり、AgentsはAI by Zapierへの移行が進行中です。移行後に未対応の機能(一部のナレッジソース連携、チャット起動型のエージェント、エージェント同士の呼び出しなど)があると公式ヘルプに記載されています。導入前に対応状況を確認してください。
個人情報・機密情報の扱い
顧客情報を外部のAIサービスに渡すため、渡してよい情報の社内ルールと権限設計を先に決めてください。ガードレール機能は運用ルールの代わりにはなりません。
よくある失敗パターンと対策
最初から広い権限と業務を任せてしまう
送信や更新まで一気に任せ、誤送信が起きるパターンです。最初は下書き作成までに限定し、承認ステップを挟みます。
指示文が曖昧で結果が安定しない
「いい感じに対応して」では結果が揺れます。対応範囲、判断基準、出力形式、禁止事項を具体的に書き、テストでの失敗例を追記して改善します。
料金や上限を確認せずに運用を始める
テスト消費や1回あたりの上限、モデル倍率を見落とし、運用中に停止することがあります。月間件数×1件あたりの消費で試算し、80%到達の通知を受け取れるようにします。
まとめ
Zapier Agentsは、自然言語の指示で、判断を含む業務を9,000以上のアプリにまたがって自動化できる機能です。ただし現在は「AI by Zapier」への移行が進行中で、料金もアクティビティ課金(Free月400/Pro年払い$400で月1,500)と、移行後のタスク課金(モデル倍率あり)が併存しています。導入時は最新の公式情報を確認してください。
鍵は、「正確さが必要な処理は通常のZap、曖昧さを許せる判断はAI」という切り分けと、承認ステップ・上限・レビューの仕組みを最初に決めることです。まずは小さな業務1つで試しましょう。


