「現場の日報や点検記録を、スマホで入力できるアプリにしたい。でも開発会社に頼むほどの予算はない」。当協会のDX支援では、こうした相談で最初に名前が挙がるノーコードツールの一つがGlide(グライド)です。表計算ソフトのデータからスマホアプリを作れる手軽さが魅力ですが、料金体系は「ユーザー数」だけでなく、編集者の数、アプリの数、月間のアップデート数などで決まるため、最初に仕組みを理解していないと「思ったより高い」「すぐ上限に当たった」となりがちです。
本記事では、Glideの料金プランを整理し、中小企業がどのプランから始めるべきか、AppSheetやkintoneとの比較、導入手順、注意点までを解説します。Glideの料金は米ドル建てで、プラン名・金額・上限は改定されることがあります。本記事の金額は2026年7月時点の公開情報に基づく目安ですので、最新情報は必ずGlide公式サイトをご確認ください。
Glideとは
表計算データからスマホアプリを作るノーコードツール
Glideは、Google スプレッドシートやGlide独自のデータベース(Glide Tables)をもとに、プログラミングなしでスマホ・PC向けの業務アプリを作れるノーコードツールです。画面(タブ)、入力フォーム、一覧、カメラ撮影、位置情報、ワークフロー(自動処理)などを、画面上の操作で組み立てます。
現場の日報、点検記録、顧客訪問の記録、備品の貸出管理など、「紙やExcelで運用していたが、現場でスマホから入力したい」という用途に向いています。
料金を決める3つの軸
Glideの料金は、主に次の3つで決まります。
- 編集者の数(アプリを作る・直す人)
- 公開するアプリの数
- 月間のアップデート数(アプリが更新される回数の目安)
利用者(アプリを使うだけの人)の人数制限はプランにより異なり、上位プランでは「ビジネスメールのユーザー数」で数える形になります。AppSheetのように「1人いくら」で単純に計算できないため、事前の試算が重要です。
料金プラン
2026年7月時点の公開情報をもとにした目安です(米ドル・年払いと月払いで金額が異なります)。
| プラン | 月額(年払い) | 月額(月払い) | 編集者 | 公開アプリ数 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| Free | $0 | – | 1名 | 1アプリ | Glideロゴ表示、機能制限が大きい、試用向け |
| Explorer | 約$19 | 約$25 | 2名(個人ユーザー最大100名) | 1 | AI機能に対応、小規模な試用・個人向け |
| Maker | 約$49 | 約$60 | 2名(個人ユーザー無制限) | 3 | カスタムドメイン、独自ブランディング |
| Business | 約$199 | 約$249 | 10名(ビジネスメールのユーザー30名まで含む) | 無制限 | API、SSO、高度なセキュリティ、優先サポート |
| Enterprise | 要見積 | 要見積 | 要見積 | 無制限 | SSO、専任アカウント管理、大規模データ連携 |
中小企業はどのプランから始めるか
目安として、次のように考えると判断しやすくなります。
- まず試したい、1つの用途だけ:Free(機能制限が大きいため、検証用)
- 社内で2〜3個のアプリを使いたい:Maker
- 部署をまたいで10名以上が編集・利用し、セキュリティ要件もある:Business
Freeはあくまで検証用です。本番運用に入る前に、現場で実際に使って問題ないか、1か月程度は試してください。
料金で見落としやすい点
ユーザー数が増えると追加料金が発生するプランがあります(Businessでは追加ユーザーが月額約$5〜$6)。さらに、為替レートによって円換算の費用が変わるほか、年払いは途中解約しにくい点にも注意が必要です。
他のツールとの比較
同じ「現場アプリ」を作る代表的なノーコードツールと、考え方を比べます。料金は代表的なプランの目安で、最新の金額は各社の公式サイトでご確認ください。
| ツール | 料金の考え方(目安) | 得意な用途 | 想定ユーザー |
|---|---|---|---|
| Glide | 編集者・アプリ数・更新数で決まる($19〜$199/月ほか) | スマホ向けの現場入力・社内ツール | 表計算ソフトのデータをアプリ化したい現場 |
| AppSheet | ユーザーごとの月額課金(1ユーザーあたり数ドル〜) | Google Workspace と連携した業務アプリ | Google Workspace を使っている企業 |
| kintone | 1ユーザーあたり月額1,000〜1,800円程度(最低5ユーザー) | 案件・顧客・プロジェクト管理などの業務システム | 部署全体で情報を共有・管理したい企業 |
見た目と手軽さを優先するならGlide、Google Workspace と一体で運用するならAppSheet、データを全社で管理する業務システムとして使うならkintone、というのが基本的な目安です。
使い方(ステップ形式)
Step 1:まず「何を入力させたいか」を紙に書く
アプリを作る前に、入力項目(日付、場所、担当者、写真、数値など)と、見る人(誰が、いつ、何を確認するのか)を紙に書き出します。ここを飛ばすと、作ってから項目が足りないことに気づきます。
Step 2:データを用意する(スプレッドシートまたはGlide Tables)
Google スプレッドシートの1行目に項目名を入力し、サンプルを数行入れます。Glide Tablesを使う場合は、Glideの画面上でテーブルを作成します。
Step 3:テンプレートからアプリを作る
Glideには業務向けのテンプレートが用意されています。近い用途のテンプレートを選び、データと接続します。ゼロから作るより、テンプレートを直す方が早く、失敗が少なくなります。
Step 4:画面(タブ)と入力フォームを整える
現場で使う画面は「一覧」「新規入力」「詳細」の3つに絞ると使いやすくなります。入力項目は、必須にするもの、選択式にするもの、写真を添付するものを分けます。
Step 5:ユーザーと権限を設定する
誰が見られるか、誰が編集できるかを設定します。顧客情報や個人情報を扱う場合は、ここを慎重に決めてください。
Step 6:少人数で試してから全体に展開する
2〜3名の現場担当者に1〜2週間使ってもらい、入力しづらい点を直してから、全員に展開します。当協会の支援でも、最初の試作は半日程度で作り、現場の担当者に実際に触ってもらってから、プランと契約を決める進め方をお勧めしています。ここで「入力が面倒」という声が出た項目を削るだけで、定着率が大きく変わるというのが、支援現場で繰り返し感じることです。
活用事例
当協会の支援現場の相談を守秘義務に配慮して一般化し、業種・規模のみを示して紹介します。
事例1:設備保守業(従業員15名)— 点検記録を紙からスマホへ
現場で紙の点検表に記入し、事務所に戻ってからExcelに転記していた会社の例です。スマホで点検結果と写真をその場で入力する形にしたことで、転記作業がなくなり、報告までの日数が短くなりました。入力項目を絞ったことが定着の決め手でした。
事例2:卸売業(従業員8名)— 顧客訪問記録の共有
営業担当ごとにノートやメモで記録していたため、担当者が不在だと状況が分からない会社です。訪問日、内容、次回アクションをスマホから入力し、全員が見られるようにしたことで、引き継ぎがしやすくなりました。
事例3:福祉・介護事業所(従業員20名)— 備品と車両の貸出管理
備品や車両の貸出を、ホワイトボードと口頭で管理していた事業所の例です。借りる人がスマホで貸出と返却を記録する仕組みにしたことで、「誰がいつ使っているか」が確認でき、探す手間が減りました。
デメリット・注意点
料金は米ドル建てで、為替の影響を受ける
円で予算を組んでいる会社は、為替の変動で費用が変わります。年払いで契約する場合は、予算に余裕を持たせてください。
データ量・更新数に上限がある
プランごとに、保存できるデータ量や月間のアップデート数に上限があります。日々大量のデータを入力する用途では、上限に早く達する可能性があります。
画面や処理の自由度には限界がある
ノーコードで作れる範囲は広いですが、複雑な計算や独自のレイアウトが必要な場合は、思い通りにならないことがあります。要件が複雑な場合は、kintoneや開発を検討してください。
作った人に依存しやすい
アプリを作った担当者が退職すると、誰も直せなくなるリスクがあります。編集者を複数人にし、設計の考え方を文書に残してください。
料金・機能は改定される
ノーコードツールは、プラン構成や上限が頻繁に見直されます。契約前に最新情報を確認し、更新のタイミングで見直してください。
よくある失敗パターンと対策
失敗1:最初から多機能なアプリを作る
項目や画面が多すぎて、現場が使わなくなる例です。対策は、最小限の機能(入力と一覧)から始め、現場の声を聞いて少しずつ足すことです。
失敗2:Freeで本番運用を始めてしまう
機能制限が大きく、すぐに壁に当たります。対策は、Freeは検証用と割り切り、本番運用では必要なプランを選ぶことです。
失敗3:データの設計を後回しにする
項目名や形式がそろっていないと、集計や分析ができません。対策は、日付、金額、選択肢などの形式を最初に統一することです。
失敗4:権限設定を甘くする
全員が全データを見られる状態では、情報漏洩のリスクがあります。対策は、役割ごとに見られる範囲を決め、定期的に見直すことです。
まとめ
Glideの料金は、編集者の数、公開アプリの数、月間アップデート数で決まります。まずはFreeで試し、実際に現場で使えると確認できたら、用途と人数に合わせてMakerやBusinessを選ぶのが基本です。ユーザー課金型のAppSheetやkintoneと比べて、自社の使い方(人数、アプリ数、データ量)で試算してから決めてください。
ノーコード活用の全体像は、当協会のDX・AI情報サイト(https://dx-ai.seed.or.jp/)の関連記事もご覧ください。料金・機能は変更されるため、最新情報は必ずGlide公式サイトでご確認ください。


