社内の連絡手段をメールや電話から切り替えたいと考えたとき、最初に迷うのが「Slack・Microsoft Teams・Chatworkのどれを選ぶか」です。3つはいずれも国内の中小企業で広く使われていますが、得意分野も料金体系も大きく異なります。本記事では、当協会が中小企業のDX支援で実際に相談を受けてきた視点から、3ツールの機能・料金・国内取引先との相性を比較し、自社に合う1つを選べるように整理します。
ビジネスチャットとは/なぜ中小企業に必要か
ビジネスチャットとは何か
「電話とメールだけで日々の業務連絡を回している」「LINEの個人アカウントで社用連絡をしている」——中小企業の現場では、こうした状態がまだ珍しくありません。ビジネスチャットとは、社内外のやり取りをチャット形式で行うためのツールの総称で、代表的なものにSlack、Microsoft Teams、Chatworkがあります。メールのように件名や宛先を毎回書く必要がなく、話題ごとにスレッドやチャンネルで会話を整理できるため、確認・返信のスピードが上がり、探し物にかかる時間も減ります。
なぜ中小企業に必要とされているのか
中小企業にとってビジネスチャットが必要とされる理由は主に3つです。第一に、テレワークや直行直帰が増え、電話や対面だけでは情報共有が追いつかなくなっていること。第二に、若手社員を中心にメールよりチャットに慣れている人材が増え、採用・定着の観点でも「今どきの働き方」を用意する必要があること。第三に、Google Workspaceや会計・勤怠システムなど他ツールとの連携によって、通知の一元化や業務の自動化が可能になることです。当協会がDX支援の現場で伺う相談でも、「情報が個人のメールボックスに埋もれて属人化している」「担当者が休むと進捗が誰にも分からなくなる」という声は非常に多く、ビジネスチャットの導入はその解決策の入口になります。
結論:こんな会社にはこのツールが向いています
詳細な比較に入る前に、結論を先にお伝えします。あくまで一般的な傾向であり、最終判断は自社の取引先やITリテラシーの状況を踏まえてご検討ください。
Slackが向いている会社
複数の外部ツール(Google Workspace、各種SaaS、開発ツールなど)と連携しながら業務を効率化したい会社、社内にIT・DXに前向きな人材がいる会社に向いています。エンジニアやマーケティング部門を抱える企業との親和性が高い傾向です。
Microsoft Teamsが向いている会社
すでにMicrosoft 365(Word・Excel・Outlookなど)を全社導入している会社に向いています。追加コストを抑えつつチャット・ビデオ会議・ファイル共有を一本化できる点が最大のメリットです。
Chatworkが向いている会社
ITツールに不慣れな社員が多い会社、建設業・製造業・士業など社外の取引先とのやり取りが多い会社に向いています。国内企業での導入実績が豊富で、取引先も既に使っているケースが多いため、社外連絡のハードルが低いことが特徴です。
3ツールの料金プラン
料金プラン一覧
料金は為替や機能改定の影響で変動することがあります。以下は2026年8月時点で確認できた目安の水準です。契約前には必ず各公式サイトの最新情報をご確認ください。
| ツール | プラン名 | 月額目安(税別・1ユーザー) | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| Slack | Free(無料) | 0円 | メッセージ検索・履歴が直近90日に制限。小規模チームのお試しに向く |
| Slack | Pro | 年払いで1,000円前後 | 履歴無制限、外部ゲスト招待、通話機能が利用可能 |
| Slack | Business+ | 年払いで2,000円前後 | SAML認証、SLA保証、監査ログなど管理機能が強化 |
| Microsoft Teams | Microsoft 365 Business Basic | 1,000円台前半 | Teams・OneDrive・Web版Officeを含む安価な入門プラン |
| Microsoft Teams | Microsoft 365 Business Standard | 2,000円台前半 | デスクトップ版Office(Word・Excel・PowerPoint)込みで一本化しやすい |
| Chatwork | Free(無料) | 0円 | チャット件数・グループチャット数に制限あり |
| Chatwork | Business | 年払いで500〜700円程度 | ファイル容量が大幅増、ビデオ通話人数の上限拡大 |
| Chatwork | Enterprise | 年払いで1,000円台 | IP指定接続、より高度なセキュリティ・管理機能に対応 |
料金だけで選ばない方がよい理由
単純な月額だけを見るとChatworkが安く見えますが、Microsoft 365をすでに契約している会社であればTeamsの実質追加コストはゼロに近く、逆にSlackは外部連携アプリを増やすほど工数削減効果が大きくなるなど、総合的なコスト対効果で判断する必要があります。
機能・使い勝手の比較
機能比較表
| 項目 | Slack | Microsoft Teams | Chatwork |
|---|---|---|---|
| 強み | 外部SaaS連携・検索性の高さ | Office製品との一体運用 | 操作の分かりやすさ・国内定着度 |
| 外部連携 | 非常に豊富(数千種のアプリ) | Microsoft製品中心に豊富 | 連携数は限定的だがAPIは公開 |
| AI機能 | 要約・検索支援などのAI機能を順次強化 | Copilotとの連携で議事録要約・タスク抽出が可能(別途ライセンスが必要な場合あり) | AI議事録要約などの機能を段階的に追加 |
| ビデオ会議 | Pro以上で搭載、大規模会議はやや不向き | 大人数のオンライン会議に強い | Businessプラン以上で複数人通話に対応 |
| 無料版の制限 | 履歴90日で過去ログが検索不可に | 個人向け無料版は法人利用に不向き | チャット数・保存容量に制限 |
| 想定ユーザー像 | IT活用に前向きな会社・専門職チーム | Office常用の会社・全社導入向き | 非IT業種・社外連絡が多い会社 |
| 国内取引先との相性 | 業種によりばらつきあり | 大企業取引先との相性が良い | 中小企業・地場企業との相性が良い |
比較表から見える選び方のポイント
この比較表からわかるとおり、「機能の多さ」だけで選ぶと自社に合わないケースがあります。特にAI機能は各社が急速に強化している領域のため、導入時点の最新情報を必ず確認したうえで、自社の業務内容・取引先との相性を優先して判断することをおすすめします。
導入の進め方(ステップ形式)
Step 1:現状の連絡手段と課題を洗い出す
電話・メール・FAX・個人SNSなど、現在使っている連絡手段と、それぞれの困りごと(伝達漏れ、返信の遅さ、履歴が追えない等)を書き出します。
Step 2:利用目的と対象範囲を決める
社内連絡のみか、取引先とのやり取りも含めるか、全社一斉導入か一部部署から始めるかを決めます。目的が曖昧なまま導入すると定着しない最大の原因になります。
Step 3:無料プランで小さく試す
いきなり有料契約せず、まずは無料プランで数週間〜1か月程度、少人数のチームで試験運用します。
Step 4:ルールを最小限決めて本導入する
チャンネル・グループチャットの命名ルール、通知設定の基本方針、既読・返信のマナーなど、最低限のルールだけ決めて全社展開します。ルールを作り込みすぎると逆に浸透しません。
Step 5:定着状況を確認し運用を見直す
導入後1〜3か月で利用状況を振り返り、使われていない機能やチャンネルを整理し、必要に応じてプランや運用ルールを見直します。
活用事例
事例1:建設業のお客様(従業員30名規模)
現場と事務所の連絡が電話中心で、写真付きの進捗共有ができず二度手間が発生していました。Chatworkを導入し、現場ごとにグループチャットを作成したところ、写真・図面のやり取りがその場で完結するようになり、事務所への電話問い合わせが大幅に減少しました。
事例2:製造業のお客様(従業員50名規模)
すでにMicrosoft 365を導入済みで、追加費用をかけずに情報共有基盤を整えたいという要望からMicrosoft Teamsを選定しました。生産管理担当と営業担当がファイルを共有しながらオンライン会議を行える体制になり、拠点間の会議移動時間が削減されました。
事例3:ITサービス業のお客様(従業員15名規模)
複数のクラウドツール(勤怠管理・タスク管理・顧客管理)を併用しており、通知が分散して見落としが発生していました。Slackを導入し各ツールの通知をチャンネルに集約したことで、確認漏れが減り、担当者の探し物にかかる時間も短縮されました。
デメリット・注意点
通知疲れ・常時つながっている感覚のストレス
チャットは即時性が高い分、通知が絶えず届くことで「常に見ていないといけない」という心理的な負担が生じやすくなります。通知のオン・オフルールや、休日・時間外の返信不要ルールをあらかじめ決めておくことが重要です。
情報が流れていき、後から探しにくくなる
会話形式のため、重要な決定事項や資料もどんどん下に流れてしまい、後から探しづらくなります。重要な情報はピン留めや別ドキュメントへの転記など、流れないための工夫が必要です。
無料プランの履歴・容量制限
無料プランは多くの場合、メッセージ履歴やファイル容量に制限があります。過去のやり取りを参照できなくなるリスクがあるため、本格運用する場合は有料プランへの移行を前提に検討することをおすすめします。
取引先との併用によるツールの乱立
取引先ごとに異なるツールを使っていると、担当者が複数のチャットアプリを併用することになり、かえって管理が煩雑になります。主要取引先が使っているツールも踏まえて選定することが望ましいです。
セキュリティ・情報管理のルール整備
チャットは手軽な分、社外秘情報を誤ったチャンネルに投稿してしまうといった事故も起こり得ます。アクセス権限の設定や、機密情報の取り扱いルールを導入初期に決めておく必要があります。
よくある失敗パターンと対策
失敗1:全社一斉導入して使われなくなる
いきなり全社展開すると、操作に不慣れな社員が使わなくなり、結局メールや電話に戻ってしまうことがあります。対策として、まず一部の部署・チームで試験運用し、成功体験を作ってから全社展開する進め方が有効です。
失敗2:既存の連絡手段を並行して残してしまう
「念のため」とメールや電話も並行して使い続けると、情報が分散し、結局どちらも中途半端になります。対策として、切り替え時期を明確に決め、社内アナウンスで「これ以降は原則チャットで連絡する」と周知することが重要です。
失敗3:ルール整備をしないまま放置する
チャンネル・グループチャットが無秩序に増えていくと、どこで何を話しているか分からなくなります。対策として、命名ルールと定期的な棚卸しの担当者をあらかじめ決めておくことです。
まとめ
選定のポイントを振り返る
Slack・Microsoft Teams・Chatworkは、それぞれ強みとする使い方が異なります。外部ツール連携を重視するならSlack、Microsoft 365との一体運用を重視するならMicrosoft Teams、取引先との相性や操作の分かりやすさを重視するならChatworkが一つの目安になります。重要なのは、料金の安さだけで選ぶのではなく、自社の業務フロー・取引先の状況・社員のITリテラシーを踏まえて選定し、小さく試してから本格導入することです。当協会では、こうしたツール選定から社内定着までを含めたDX支援を行っています。詳しくは当協会のAI/DX支援サイトをご覧ください。


