「チャンネルが増えすぎて、休み明けに未読が数百件たまっている」「あの件、どのスレッドで決まったのか探せない」。Slackを使う中小企業ほど、情報が多すぎて追いきれないという悩みを抱えています。
この課題に対する答えとして、2026年9月時点のSlackには「Slack AI」と呼ばれるAI機能群が有料プランに標準搭載されています。本記事では、Slack AIの使い方と料金、Microsoft Teams・Google Chat・Chatworkとの比較、導入ステップ、注意点を、中小企業の視点で整理します。
Slack AIとは
Slackに組み込まれた生成AI機能の総称
Slack AIとは、Slackの会話・ファイル・ハドルミーティング(音声通話)の内容を生成AIが読み取り、要約・検索・下書き作成などを行う機能群のことです。別のアプリを開かず、Slackの画面内で「このチャンネルの未読をまとめて」といった依頼をそのまま実行できる点が特徴です。
以前はSlack AIは有料アドオン(追加課金)として提供されていましたが、2025年6月の料金改定ですべての有料プランに組み込まれ、追加費用なしで使えるようになりました。改定にあわせて上位の「Enterprise+」プランが新設され、ビジネスプラスの月額は1,600円から1,920円(年払い)に引き上げられています(出典:ASCII.jp 2025年6月18日記事、Slack公式ブログ)。
2026年に「Slackbot」がパーソナルAIエージェントに進化
さらに2026年1月からは、これまで簡易な自動応答ボットだった「Slackbot」が、Slack内の会話・ファイル・プロジェクトを理解して動くパーソナルAIエージェントとして国内で段階的に提供開始されました。ビジネスプラスおよびEnterprise+では追加費用なしで利用できます。検索バー横のアイコンから呼び出し、情報の検索・要約、canvas(Slack内の文書)の作成などを会話形式で依頼できます。
Slack AIの主な機能と仕組み
AI要約(チャンネル・スレッド・ファイル)
チャンネルやスレッドの右上メニューから「要約」を選ぶと、未読分や指定期間のやり取りを数行にまとめてくれます。要約には元メッセージへのリンクが付き、気になる箇所だけ原文へ戻れます。ビジネスプラス以上では、PDFやドキュメントなど共有ファイルの要約と、チーム全体の動きを毎朝まとめる「毎日のまとめ(デイリーダイジェスト)」も使えます。
AI検索(自然文で質問して回答を得る)
検索バーに「先月の展示会の出展費用はいくらで決まった?」のように文章で質問すると、Slack内の会話や共有ファイルから根拠付きで回答を生成します。Enterprise+ではさらに「エンタープライズ検索」として、Google ドライブ・OneDrive・Box・GitHubなど接続した外部アプリまで横断して検索できます。検索対象はユーザー本人の権限内に限られます。
ハドルミーティング議事録(ハドルノート)
Slackの音声・ビデオ通話「ハドルミーティング」を終えると、文字起こし・重要なポイント・実施項目(アクション)を含む議事録が自動で生成されます。プロプラン以上で利用できます。長時間の顧客商談の議事録についてはClaudeで議事録と文書作成を自動化する記事で解説しています。
Slackbot(エージェント)とAIワークフロー生成
Slackbotは「今週の◯◯プロジェクトの進捗をcanvasにまとめて」「明日10時に見積提出をリマインドして」といった依頼に対応します。また、ワークフロービルダーでは、やりたいことを文章で書くとワークフローの雛形をAIが生成する機能(ビジネスプラス以上)が使えます。既存のワークフロー活用はSlack Workflow Builderで承認フローを自動化する記事をご参照ください。
Slack AIの料金プラン(2026年9月時点)
Slack AIは加入プランに応じて使える範囲が決まります。以下はSlack公式料金ページ(日本)の2026年9月時点の表示です。価格はユーザー1人あたりの月額・税別で、最新情報は公式サイトをご確認ください。
| プラン | 月額(年払い) | 月額(月払い) | 使えるAI機能 |
|---|---|---|---|
| フリー | 0円 | 0円 | AI機能は原則なし(Slackbotの期間限定トライアルのみ)。メッセージ履歴は90日間 |
| プロ | 925円 | 1,050円 | 基本的なAI機能:スレッド・チャンネルの要約、ハドルミーティング議事録、AIアシスタントアプリの利用 |
| ビジネスプラス | 1,920円 | 2,160円 | 高度なAI機能:上記に加えSlackbot(パーソナルAIエージェント)、AI検索、毎日のまとめ、ファイル要約、AI翻訳、AIワークフロー生成、canvasのAI文書作成支援 |
| Enterprise+ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | エンタープライズグレード:上記に加え外部アプリ横断のエンタープライズ検索、高度なセキュリティ・管理機能 |
期間限定の割引プロモーションが表示されることもあるため、契約前に必ずご確認ください。プランごとの基本機能の違いはSlack料金プラン比較ガイドで詳しく解説しています。
中小企業はどのプランを選ぶべきか
要約とハドル議事録だけならプロで足ります。効果の大きいAI検索とSlackbotはビジネスプラス以上です。年払いでの差額は1人あたり月995円ですので、10名なら月約1万円の差になります。AI検索で1人が1日10分の「探す時間」を削減できれば、時給2,000円換算で月約6,600円分(20営業日)の効果となり、差額を上回る計算です。
ユーザー数の数え方に注意
Slackの有料プランは、ワークスペース内の全メンバー分の課金が基本です。「営業チームだけAIを使いたい」という場合でも一部だけの契約はできないため、全社導入を前提に費用を試算してください。
他ツールとの比較(Teams Copilot・Google Chat+Gemini・Chatwork)
主要3ツールと比較します(いずれも2026年9月時点・税別・ユーザー1人あたり月額)。
| ツール | AI機能を使う最低構成と価格 | 主なAI機能 | 想定ユーザー |
|---|---|---|---|
| Slack(ビジネスプラス) | 1,920円(年払い) | 要約、AI検索、ハドル議事録、Slackbotエージェント、翻訳、ワークフロー生成 | Slackを既に使っており、社内情報の検索・要約を強化したい企業 |
| Microsoft Teams+Microsoft 365 Copilot Business | Microsoft 365 Businessプランに加えCopilot Businessアドオン3,148円(年払い。月払い3,778円。2026年12月31日まで初年度2,698円のプロモーションあり) | Teams会議の要約・議事録、チャット要約、Word・Excel・Outlook等での文書生成 | Microsoft 365中心で、Office文書の生成まで一体で使いたい企業 |
| Google Chat+Gemini(Google Workspace Business Standard) | 1,600円(Business Starterの800円ではGmailのGemini機能が中心で、Chat内のGeminiはStandard以上) | Chatのスペース要約、Gmail・ドキュメント・Meetでの生成AI支援、Geminiアプリ | Google Workspaceを基盤にし、追加費用を抑えてAIを使いたい企業 |
| Chatwork(ビジネスプラン) | 700円(年間契約。月間契約は840円) | AI要約、AI下書き作成、AI解説・分析など(月間の利用回数上限あり・順次公開) | 取引先とのやり取りが多く、低コストで基本的なAI要約を使いたい企業 |
価格出典:各社公式料金ページ(2026年9月時点)。
比較のポイント:「チャット内AI」か「業務全体のAI」か
Slack AIは「チャットに蓄積された情報を活かす」ことに特化しています。一方、Microsoft 365 CopilotやGoogle WorkspaceのGeminiは、メール・文書・表計算・会議まで含めた業務全体でAIを使う設計です。すでに業務基盤がMicrosoft 365やGoogle Workspaceに寄っているなら、その基盤に付属するAIを先に使い切るほうが費用対効果は高くなります。3ツールの基本機能の比較はSlack・Teams・Chatwork比較記事をご覧ください。
Chatworkは「安さ」と「機能範囲」のバランスで判断
Chatworkのビジネスプランは月700円と最も安価で、AI要約とAI下書きが使えます。ただしAI機能は現時点でPCブラウザ・デスクトップアプリからの利用に限られ、月間の利用回数に上限があるため、「AI検索で社内情報を探す」用途にはSlackのほうが向いています。
Slack AIの使い方(ステップ形式)
Step 1:プランを確認し、AI機能の設定を有効にする
オーナーまたは管理者が「設定と管理」で現在のプランを確認します。管理者設定でAI機能のオン・オフを制御できるため、まず一部の部門から試したい場合は範囲を限定して有効化してください。
Step 2:チャンネル要約で「未読の山」を片付ける
未読が多いチャンネルを開き、チャンネル名の横のメニューから「要約」を選びます。期間を指定すると数行の要約が表示されます。朝一番に主要チャンネルの要約を読む習慣にすると、1日の立ち上がりが早くなります。
Step 3:ハドルミーティングで議事録を自動生成する
社内の短い打ち合わせをハドルミーティングで行い、終了時に議事録の生成を有効にしておくと、文字起こしと要点・実施項目がcanvasとして保存されます。打ち合わせ後に「議事録を書く」作業がなくなり、決定事項の共有漏れも防げます。
Step 4:AI検索で「探す時間」をなくす
ビジネスプラス以上では、検索バーに質問文を入力すると回答が生成されます。「◯◯社の請求締め日はいつ?」のように5W1Hを明確にした質問ほど精度が上がります。回答には根拠となるメッセージへのリンクが付くため、必ず原文で確認してから対外的な回答に使ってください。
Step 5:Slackbotに定型作業を任せる
検索バー横のSlackbotアイコンを開き、「今日の未読を要約して、私宛てのアクションを一覧にして」「◯◯プロジェクトチャンネルの今週の進捗をcanvasにまとめて」など、具体的に依頼します。1か月ほど試したら「探す時間」「議事録作成時間」の変化を数値化し、効果が出た使い方を他部門へ展開してください。
Slack AIの活用事例
製造業(従業員40名規模):ハドル議事録で工程会議の記録作業をゼロに
毎朝の工程確認をハドルミーティングで行い、議事録の自動生成を有効にしました。以前は現場リーダーが会議後に15分かけてメモをまとめていましたが、AIが生成した要点と実施項目をそのまま共有する運用に切り替え、月あたり約5時間の記録作業がなくなりました。
専門サービス業(従業員15名規模):AI検索で過去案件の対応履歴を即時参照
顧客ごとのチャンネルに3年分のやり取りが蓄積され、過去の対応を探すのに時間がかかっていました。ビジネスプラスに移行してAI検索を使い、「◯◯社の前回の納品時に問題になった点は?」と質問するだけで、根拠付きの回答が得られるようになりました。
小売業(従業員25名規模・複数店舗):毎日のまとめで店舗間の情報格差を解消
本部と5店舗が同じワークスペースを使い、各店舗の報告チャンネルを毎朝「毎日のまとめ」で本部担当者が確認する運用にしました。全店舗のチャンネルを個別に読む必要がなくなり、朝の確認時間が1時間から15分に短縮されました。
当協会の支援現場から
当協会が支援した士業事務所(従業員10名規模)では、Slackのフリープランを長く使っており、90日でメッセージ履歴が消えるため「過去の判断を探せない」ことが最大の不満でした。プロへ移行して履歴を無期限化したうえで要約とハドル議事録を使い始め、その後AI検索の必要性を感じてビジネスプラスへ段階的に移行しています。当協会の支援現場では、最初からビジネスプラスに移るより、「履歴の無期限化→要約→AI検索」と効果を確認しながら段階を踏むほうが、社内の納得を得やすいと感じています。
Slack AIのデメリット・注意点
AI検索・Slackbotはビジネスプラス以上に限られる
最も効果の大きいAI検索とSlackbotは、プロプランでは使えません。フリー・プロ向けのSlackbotトライアルは期間限定で、恒常的な利用はビジネスプラス以上が前提です。
要約は「読み飛ばし」のリスクを生む
AI要約は便利ですが、金額・日付・固有名詞などの細部が省略されることがあります。要約に付く元メッセージのリンクから、必ず原文を確認する運用ルールを決めてください。
入力データの取り扱いとセキュリティ方針の確認
Slack公式では、Slack AIはSlackの信頼できるインフラ上で動作し、Slack本体と同様のセキュリティ基準で保護されると説明されています。ただし、社内の情報管理規程で「生成AIへの入力禁止情報」を定めている場合は、Slack AIも対象になるかを確認し、必要に応じてAI機能の有効範囲を管理者側で制御してください。生成AIのセキュリティ対策全般はAIセキュリティ完全ガイドで解説しています。
全メンバー課金による費用増
ビジネスプラスへの移行は全員分の費用増になります。閲覧中心のメンバーが多い場合は、ゲストアカウントの活用や、AI機能を本当に必要とする人数の見極めが必要です。
よくある失敗パターンと対策
失敗1:AI機能だけを目的にビジネスプラスへ移行し、使われない
誰がどの場面で使うのかが決まっていないと定着しません。対策として、導入前に「朝の未読処理」「会議議事録」「過去案件の検索」など具体的な利用場面を3つ決め、担当者と効果測定の方法をセットで定めてください。
失敗2:要約を鵜呑みにして判断ミスが起きる
要約で「承認済み」と表示されていたが、原文を見ると条件付きだった、というケースは実際に起こり得ます。対策は、「対外的な回答・金銭が絡む判断は原文確認を必須にする」というルールの明文化です。
失敗3:チャンネル設計が乱雑でAI検索の精度が上がらない
雑談と業務連絡が混在するとAIの回答にノイズが増えます。顧客別・プロジェクト別のチャンネル設計を見直し、決定事項はスレッド末尾に「決定:◯◯」と明記する習慣をつけてください。重要なやり取りがメールや口頭で完結しSlackに残っていなければ、要約も検索も機能しないため、「業務連絡はSlackに集約する」ルールもあわせて必要です。
まとめ
Slack AIは2026年9月時点で有料プランに標準搭載され、プロで要約とハドル議事録、ビジネスプラス(年払い1,920円・税別)でAI検索・Slackbotエージェント・毎日のまとめなど主要機能がそろいます。業務基盤がMicrosoft 365やGoogle Workspaceに寄っている企業は、そちらの付属AIを先に検討する価値があります。
導入の鍵は、利用場面を決めて段階的に広げること、そして要約を鵜呑みにせず原文確認をルール化することです。自社のチャット環境にどのAIが合うか迷われる場合は、当協会のDX・AI活用支援サイトの関連記事もあわせてご覧ください。


