n8n(エヌエイトエヌ)は、複数のクラウドサービスやAIをつないで業務を自動化できるワークフロー自動化ツールです。ノーコードで画面上に処理をつなげられる一方、JavaScriptやPythonのコードも書けるため、定型業務からAIを組み込んだ処理まで幅広く対応できます。
料金はクラウド版が月€20(年払い時)から、セルフホスト版(Community Edition)はソフトウェア自体が無料です。本記事では、n8nの特徴と料金、Make・Zapierとの違い、中小企業が始めるための具体的な使い方を解説します。
n8nとは
ノーコード/ローコードで使えるワークフロー自動化ツール
n8nは、「フォームに問い合わせが届いたら」「毎朝9時になったら」といったきっかけ(トリガー)を起点に、データの取得・加工・通知・記録といった処理を「ノード」と呼ばれる部品でつないでいくツールです。基本はマウス操作で組み立てられるノーコード型ですが、細かな加工が必要な場面ではJavaScriptやPythonのコードノードも使えるローコード型の性格を持っています。
できること1:AIエージェント・LLMとの連携
n8nにはAIエージェントやLLM(大規模言語モデル)を扱うノードが用意されており、OpenAI、Anthropic Claude、Google Geminiなどに接続できます。問い合わせ内容の分類、メール文面の要約、議事録からのタスク抽出など、「判断を伴う作業」をワークフローの中に組み込めるのが大きな特徴です。
できること2:Webhookによる外部システムとの接続
Webhookを受け取るノードを使えば、専用の連携機能がないシステムからでもデータを受け取れます。自社のWebフォームや業務システムからの通知をきっかけに、処理を自動で走らせることができます。
できること3:セルフホストで社内にデータを置ける
n8nはクラウド版に加えて、自社のサーバーに構築して使うセルフホスト版を選べます。顧客情報など社外のサービスに預けたくないデータを扱う場合でも、自社管理の環境で自動化を実現できる点が、ZapierやMakeとの大きな違いです。
料金プラン
クラウド版とセルフホスト版の料金(2026年9月時点)
| プラン | 月額(年払い/月払い) | 主な特徴 |
|---|---|---|
| Starter | €20/€24 | 月2,500実行。まず小さく試したい企業向け |
| Pro | €50/€60 | 月10,000実行。複数業務の自動化を本格運用する企業向け |
| Business | €667/€800 | 月約40,000実行。SSOなど組織向けの管理機能 |
| Enterprise | 個別見積 | 大規模・高度な管理要件向け |
| セルフホスト版(Community Edition) | ソフトウェアは無料 | 自社サーバーに構築。サーバー費用・運用負荷は自社負担 |
料金はユーロ建てで、2026年9月時点の情報です。最新の料金は公式サイトをご確認ください。
「実行(execution)」単位の課金とは
n8nのクラウド版は「実行(execution)」単位で課金されます。ここでいう1実行は、ワークフローが最初から最後まで1回動くことを指し、途中のステップ数は数えません。10ステップのワークフローでも、1回動けば1実行です。ステップ数が多い複雑な自動化ほど、この課金方式の恩恵を受けやすくなります。
他ツールとの比較
n8n・Make・Zapierの比較表
| 項目 | n8n | Make | Zapier |
|---|---|---|---|
| 課金の単位 | ワークフロー1回の実行 | 処理(モジュール)ごとの消費量 | アクションごとのタスク数 |
| 価格 | クラウド版は月€20〜(年払い)/セルフホスト版はソフト無料 | 無料プランあり・有料は月額制(公式参照) | 無料プランあり・有料は月額制(公式参照) |
| セルフホスト | 可能 | 不可(クラウドのみ) | 不可(クラウドのみ) |
| コードの利用 | JavaScript・Pythonのコードノードあり | 一部対応 | 一部対応 |
| 想定ユーザー | AI連携や複雑な処理を扱いたい企業、データを社内に置きたい企業 | 視覚的に分岐の多い処理を組みたい企業 | まず手軽に定番アプリ同士をつなぎたい企業 |
Make・Zapierの料金は改定が多いため、具体的な金額は各公式サイトでご確認ください。両ツールの違いはZapierとMakeの比較記事で詳しく解説しています。
n8nが向いている企業・向いていない企業
ステップ数の多い処理を大量に回す企業や、AIを組み込んだ自動化をしたい企業、データを社外に出したくない企業にはn8nが向いています。一方、社内にITに慣れた担当者がおらず、定番アプリ同士を数ステップでつなげれば足りる場合は、ZapierやMakeのほうが立ち上がりは早いでしょう。
使い方(ステップ形式)
ここでは「問い合わせフォーム→AIで分類→Slack通知→スプレッドシート記録」という流れを例に、n8nクラウド版での基本的な組み立て方を紹介します。
Step 1:アカウントを作成し、ワークフローを新規作成する
公式サイトからクラウド版のアカウントを作成し、管理画面で新しいワークフローを作成します。まずは小さな業務1つを対象に決めておくと、迷わず進められます。
Step 2:トリガーを設定する(フォーム受信)
最初のノードとしてWebhookノード(またはフォーム系のトリガー)を置き、問い合わせフォームの送信内容を受け取れるようにします。テスト送信を行い、氏名・メールアドレス・問い合わせ本文が受け取れているか確認します。
Step 3:AIノードで問い合わせを分類する
AI/LLMノードを追加し、利用するAIサービスのAPIキーを登録します。「見積依頼」「サポート」「採用」「その他」のいずれかに分類するよう指示文を書き、問い合わせ本文を渡します。
Step 4:分類結果に応じてSlackへ通知する
分岐ノードで分類結果ごとに処理を分け、Slackノードで担当チャンネルに通知します。見積依頼は営業チャンネル、サポートはサポートチャンネル、といった振り分けが可能です。
Step 5:Google スプレッドシートに記録する
Google Sheetsノードを追加し、受付日時・分類結果・問い合わせ内容を1行ずつ追記します。対応漏れの確認や月次の集計にそのまま使えます。
Step 6:テストして有効化する
一連の流れをテスト実行し、分類や通知が意図どおりになっているかを確認したうえで、ワークフローを有効化します。運用開始後も、しばらくは実行履歴を見て誤分類がないかをチェックしましょう。
活用事例
以下は、中小企業での使い方をイメージしていただくための想定例です。
事例1:卸売業(従業員30名規模)で受注メールの転記を自動化
取引先からメールで届く注文内容を、AIノードで品番・数量・納期に分解し、スプレッドシートの受注台帳へ自動で記録する使い方です。手入力による転記ミスが減り、担当者は内容確認と例外対応に集中できるようになります。
事例2:不動産業(従業員10名規模)で反響対応を早める
ポータルサイトや自社サイトからの問い合わせを受け取り、物件名と希望条件を要約してチャットへ通知する使い方です。担当者が外出中でも内容をすぐ把握でき、初回連絡までの時間を短縮できます。
事例3:製造業(従業員50名規模)でセルフホストによる社内データ連携
設計データや顧客情報を社外のクラウドに出せないという方針の企業が、社内サーバーにn8nを構築し、基幹システムの出力データを社内チャットへ定期通知する使い方です。データを社内に置いたまま自動化を進められます。
デメリット・注意点
画面や情報が英語中心
n8nの操作画面や公式ドキュメント、コミュニティの情報は英語が中心です。日本語の解説は増えてきていますが、エラー時の調べものには英語の情報を読む場面が出てきます。
セルフホストは保守とセキュリティ対策が自社の責任
セルフホスト版はソフトウェアが無料な代わりに、サーバーの構築、バージョンアップ、バックアップ、アクセス制限などを自社で担う必要があります。更新を放置すると、脆弱性を抱えたまま外部に公開された状態になるおそれがあります。また、独自の利用ライセンスが適用されるため、自社内での利用以外(顧客向けサービスとして提供するなど)を考える場合は条件の確認が必要です。
実行数の設計を誤ると上位プランが必要になる
1分ごとに外部サービスを確認するような設定にすると、処理対象がなくても実行回数がかさみます。トリガーの間隔や条件を設計しないと、想定より早く実行数の上限に達します。
作った人しか直せない「属人化」
自由度が高い分、作成者の工夫が詰まったワークフローは他の人が読み解きにくくなります。担当者の異動・退職で誰も修正できなくなるのは、中小企業でよくある課題です。
よくある失敗パターンと対策
当協会(一般社団法人中小企業販促・DX支援協会)のDX支援の現場では、「Zapierのタスク課金が想定以上に膨らんだ」「社内のデータをできるだけ外に出したくない」という相談の中で、n8nが候補に挙がることが増えています。一方で、セルフホストを検討したものの、サーバーを保守できる担当者が社内にいないというケースも多く見られます。こうした現場の声を踏まえ、よくある失敗と対策を整理します。
失敗1:費用だけを見てセルフホストを選ぶ
「ソフトが無料だから」とセルフホストを選び、更新や障害対応が手に負えなくなるパターンです。対策として、保守の担当者と外部の支援先を確保できない場合は、まずクラウド版で始め、要件が固まってからセルフホストを検討しましょう。
失敗2:いきなり大きな業務を自動化しようとする
複数部署にまたがる業務から着手すると、例外処理が多く完成しないまま止まりがちです。問い合わせ通知や転記など、1つの小さな業務から始めて効果を確認するのが近道です。
失敗3:AIの出力をそのまま使う
AIの分類や要約は誤ることがあります。顧客への自動返信など外部に出る処理では、人が確認する工程を挟むか、判断に迷うものは「その他」として人に回す設計にしておきましょう。
失敗4:ワークフローの記録を残さない
何のためのワークフローか、どのアカウントやAPIキーを使っているかを記録していないと、属人化が進みます。ワークフロー名の付け方や説明メモのルールを決め、社内で一覧を管理しましょう。
まとめ
n8nは「AI連携」と「データを手元に置く自動化」の有力候補
n8nは、ノーコードとコードの両方で業務自動化を組み立てられ、AIエージェントやLLMとの連携、Webhook、セルフホストに対応したツールです。料金はクラウド版が月€20(年払い)から、セルフホスト版はソフトウェアが無料で、ワークフロー1回の実行単位で課金される点が特徴です(2026年9月時点。最新の料金は公式サイトをご確認ください)。
一方で、英語中心の画面、セルフホストの保守、実行数の設計、属人化といった注意点もあります。まずはクラウド版で小さな業務から試し、自社で運用できる体制を見極めながら広げていくことをおすすめします。業務自動化の全体像は中小企業の業務自動化 完全ガイド、その他のDX・AI活用情報は当協会のDX・AI情報サイトでも紹介しています。


